過去のCCバージョンを削除せずにCC 2015をインストールする方法
まず最初に注意点ですが、Creative Cloud デスクトップアプリケーションから CC 2015 インストールする際、[詳細オプション]をクリックして[以前のバージョンを削除]のチェックを外さないと、CC や CC 2014 が削除されます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考: 新登場、メジャーアップデート Photoshop CC 2015年リリース | Adobe Creative Station
Photoshop CC 2015の新機能
同じレイヤースタイルの重ねがけ
レイヤースタイルパネルで、[境界線]などの右にある[+]をクリックすると、同じレイヤースタイルを追加できます。
これまで、1つのレイヤーに境界線を2つかけたりすることができず面倒な代替方法が必要でしたが、だいぶ楽になりそうです。
注意点としては、たとえば[境界線]を複数追加した時は、2本目は1本目よりサイズを大きくしないと見えません。
また、境界線同士であれば↑↓ボタンで順序を入れ替えることができますが、他のレイヤースタイルとは現時点では順序を入れ替えることができません。
シェイプ(レイヤー)からガイドを引く
長方形ツールなどでシェイプを作成し、そのシェイプに合わせてガイドを引くことができます。
長方形などのシェイプレイヤーが選択されている状態で、メニューの[表示>シェイプから新規ガイドを作成]を選択すると、長方形にあわせてガイドが引かれます。
Photoshop CC 2015では自動的にガイドを引くことができる。手作業から解放される。 ( #CCNext #CC新発見 live at http://t.co/Q6OsIpeHC7 ) pic.twitter.com/443F18F8Ui
— 池田 泰延 (@clockmaker) June 17, 2015
iPhoneでデザインカンプのプレビュー
Device Preview パネルを使って、iPhone でデザインカンプのプレビューができます。
Photoshop でデザインを変更すると、すぐに iPhone に反映されます。
詳しくは下記ページをご覧ください。動画もあります。
参考: モバイルアプリケーションやWebサイトのデザインをプレビューする | Adobe Photoshop CCチュートリアル
参考: PSDをiPhoneでリアルタイムに確認できるPhotoshop CC 2015のデバイスプレビュー機能が超便利! – ICS LAB
複数のアートボード
[新規]ダイアログでドキュメントの種類から[Web]や[モバイルアプリデザイン]を選択すると、通常のカンバスではなく「アートボード」になります。
アートボードは、カンバスと違い複数作成することができるので、たとえばトップページと下層ページを1つの PSD に入れたい場合などに便利そうです。
ただし、いくつか注意点があります。
- 古いバージョンでPSDを開くと、アートボードが「アートボードという名前のレイヤーグループ」に変換され、全アートボードが統合された画像になる
- スライスなしで[Web用に保存]した場合、選択されたアートボードのみ保存できない(全アートボードが統合された画像になる)
[新規]ダイアログでドキュメントの種類から[Web]や[モバイルアプリデザイン]を選択すると、強制的にアートボードになってしまうため、従来のカンバスで作業したいときは新規ダイアログで[Photoshop 初期設定]を選択する必要があります。
Photoshop CC 2015 でアートボードを使いたくない方は、新規ダイアログの右側の[プリセットを保存]をクリックしておくと便利かもしれません。
デザインスペース(試験機能・問題あり)
最近は、Webやモバイルアプリのデザインカンプ制作を Photoshop ではなく Mac の Sketch.app でやっている方も徐々に増えているそうですが、それを気にしてか、Sketch.app のようなシンプルな UI が用意されました。
有効にするには、Photoshop の環境設定の[テクノロジープレビュー]で[デザインスペースを有効にする]にチェックを入れ、メニューの[ウインドウ>デザインスペース (プレビュー)]を選択します。
Adobe の説明によると「これまでは図形を選択することも難しかったが、操作の習得がが簡単になった」とのことですが、現時点ではできることが少なすぎるのと、基本操作やキーボードショートカットが Photoshop の通常のモードと違いすぎて、私にはかえって使いづらかったです。
例えば、通常のモードでは[長方形ツール]でカンバスやアートボード内をクリックすると、数値指定で長方形を作成することができますが、[デザインスペース (プレビュー)]ではそれができません。
また、不具合のようなものも多くあり、例えば作成した長方形が見えないことがある、選択ツールでクリックしても長方形が選択できないこともよくあります。
さすがに選択ツールで選択できないのは私の環境だけの問題ではないかと思い、Photoshop 関連の本を書いている方に聞いてみたところ、やはり選択ツールで選択できないことがあるようです。
ただ、選択ツールでクリックしても選択できない場合、ダブルクリックすると選択できることがあります。
レイヤーグループ内の1つのレイヤーを選択肢たい時、[デザインスペース (プレビュー)]ではダブルクリックで選択できるので、そのことと関連がある気がします。
不具合
私の環境では、起動時に「Generatorに問題があります」と表示されることがあります(プラグインは最初から入ってる「Adobe Color」のみです)。
その他
レイヤーパネルで、レイヤーグループにレイヤーをドラッグすると、常にレイヤーグループ内の1番上に入る仕様に変わりました。
その他の Photoshop CC 2015 の新機能は以下のページに書いてあります。
関連: Adobe Photoshop CCの新機能 | Photoshop CCの購入
Adobe Illustrator CC 2015の新機能
自動保存
Photoshop 同様、自動保存ができるようになりました。
自動保存に関して誤解している方が多いので念のため書いておきますが、自動保存は復帰データを別途保存するものであり、編集中のファイルの上書きではありません。
GPUパフォーマンス(問題あり)
Illustrator CC2015年リリース版はMercury Performance Engineが劇的に改善され、GPUを使用して処理することで、大幅にパフォーマンスが改善。CS6と比較して速さと精度が10倍以上向上しました。 ( #CC新発見 live at…
— アドビ クリエイティブ クラウド (@creativecloudjp) June 17, 2015
Photoshop のように、GPUを使用してパフォーマンスを向上させることができるようになりました。
実は Illustrator CC 2014 では Windows かつ NVIDIA のグラフィックボードが搭載されている場合のみこの機能を利用することができたのですが、CC 2015 では Mac や AMD のグラフィックボードでも利用できるようになりました。
この機能をオンにするには、Illustrator の環境設定で[GPU パフォーマンス>GPU パフォーマンス]にチェックを入れます。
(対応しているグラフィックボードが搭載されている場合のみチェックできます)
この機能をオンにした時のみ、トラックパッドをピンチアウトするなどして拡大するときの表示がスムーズになったり、従来 6400% までしか拡大表示できなかったのが、10倍の 64000% まで拡大表示できるようになりました。
しかし、Illustrator の描画を GPU でというのは嫌な予感が…
まずは、長方形ツールでアートボード内をクリックして、100px 四方の正方形を制作します。
線幅は 1px で 100% 表示ですが、既に線の太さが怪しく、大変嫌な予感がします。
この正方形を選択し、[線]パネルで、線幅を 0.1px にします。
線がかすれたり、表示が消えたりしています。
選択ツールで選択すると、きちんと正方形になっているのでデータは正しいのですが、表示がおかしいです。
アートボードの表示を拡大縮小すると、上の辺が表示されたりされなかったりしています。
Twitter でアンケートを取ったところ、「Windows かつ NVIDIA のグラフィックボードを使用している環境」では表示はおかしくならないようですが、それ以外の環境では表示がおかしくなることが多いようです。
例えば、MacBook Air 2012(グラフィックボードは Intel HD 4000)でも、線がぼやけます。
なお、このような話をしていると「AMDを使っているのが悪い」「Macが悪い」と決めつけたがる方がいらっしゃるので先に書いておきますが、Photoshop は以前から GPU に対応していますが、AMD のグラフィックボードを搭載した Mac でも問題なく動いています。
同様に、Webブラウザーの WebGL(3D)や3Dのゲームなども問題なく動いており、この問題はあくまで Illustrator CC 2015 固有の問題であると思います。
「Windows かつ NVIDIA のグラフィックボードを使用している環境」で正常に動いているのは、Illustrator CC 2014 の頃から「Windows かつ NVIDIA のグラフィックボードを使用している環境」のみ「GPUパフォーマンス」に対応していたからだと思います。
※ Twitter で、「Windows + NVIDIA 環境でも、長方形ツールでドラッグ中の補助線が正しく表示されない場合がある」というリプライを頂きました。
あと、私の環境(iMac Retina 5K、AMD、OS X 10.10.2)では Illustrator CC 2015 で「GPUパフォーマンス」をオンにして作業したあとスリープしたり、長時間放置しているとカンバスの表示が一切更新されなくなる(アプリはフリーズしていないが、表示倍率を変更したりしても何も起きない)ということが2回ありました。
これは、私以外の環境では確認されていないようです。
なお、Windows では GPUプレビューをオンにすると、OS がクラッシュすることがあるようです。
【再ツイート】Illustrator CC2015での「GPUプレビューの無効化」は、ファイル表示がおかしい、ファイルにギザギザの線が入る、最新バージョンをインストール後Windowsがクラッシュする場合にも改善例があります。→ http://t.co/nX8zUbJqHn
— アドビ サポート担当 (@AdobeSupportJ) June 24, 2015
7月9日に、19.0.1 アップデートが配布され「GPU レンダリング(中略)問題が解決されます。」と書いてありましたが、少なくとも私の環境ではまったく解決しませんでした。
Illustrator CC 2015のアップデートきたー!「GPUレンダリングなどの問題が解決します」
早速GPUオンにして長方形を作成した結果…
_人人人人人人人人_
> 解決してない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ pic.twitter.com/QexYTtqGOE
— なつき@Webデザインスクール8月から (@Stocker_jp) 2015, 7月 9
タッチ操作
タッチ環境での描画 | Adobe Illustrator CCチュートリアル
その他の Illustrator CC 2015 の新機能は以下のページに書いてあります。
関連: Adobe Illustrator CCの新機能 | Illustrator CCの購入
問題点
以下の記事にある回転バグ(長方形を90度回転させた時などに微妙にずれるバグ)が直っていません。
Illustrator CCの回転が雑な件について – saucer
追記: アップデートしていない Illustrator CC 2015 で作成したドキュメントは壊れている可能性があり、作りなおしたほうが良いという情報も…
関連: 作製したファイルが3MBを超えると開けません。(フリーズします) | Adobe Community
Illustrator CC 2015 で、SVG書き出し系のスクリプトを一度でも実行してしまうと、次から「複製を保存」からSVGを保存しても、オブジェクトの中身が空になってしまう… Illustrator を再起動してもダメ。なんだこれ…
— みやざわ (@onthehead) June 23, 2015
Dreamweaver CC 2015
新機能
- Lint 機能(HTMLやCSSの文法をリアルタイムに検証)
- コードビューでカラーコードや画像のパスの上にマウスカーソルを乗せるとプレビューできる
- Emmet プラグインが最初から入っている
- 新規ダイアログで Bootstrap が選択できる
これまでも、Emmet プラグインや Bootstrap を自分でインストールして利用することはできたのですが、これは新機能と言って良いのでしょうか…
問題点
Mac版のコードビューで、謎の下線が表示される問題はそのままです。
Flash Professional CC 2015
問題点
ポップアップメニューなど、UI の一部が中華フォントになっています。
まとめ
Adobe CC 2015 は、Photoshop で同じレイヤースタイルを複数追加できるなど良くなったところもありますが、全体的に不具合の多さ、特に基本的な機能の不具合が目立ちました。
新しい Creative Cloud の3つのテーマとは? 大幅に向上した「正確さとパフォーマンス」、「コネクテッドアプリ」、そして新たに発表された 「CreatveSync」といった概念が新しい Creative Cloud のテーマです。 ( #CC新発見 live at…
— アドビ クリエイティブ クラウド (@creativecloudjp) June 17, 2015
大幅に向上した「正確さとパフォーマンス」とありますが、確かに Illustrator の GPU 対応でパフォーマンスは向上したようです。
しかし「正確さ」に関してはどうなのでしょうか。
Mac版 Dreamweaver CC(2013年版)の初期バージョンは、HTML や CSS の一部の行が消える、コードが破損するなど基本的な機能に深刻な問題がありました。
また、Fireworks も長い間 UI の誤訳が放置されたことがありました。
しかし、Photoshop や Illustrator などの主要製品で、シェイプレイヤーが選択できない、線がまともに表示できない、OS がクラッシュするなど基本的な機能に深刻な問題があるのは珍しいのではないでしょうか。
Photoshop の「デザインスペース」は試験機能でデフォルトはオフになっていますが、Illustrator の GPU プレビューは正式機能で、デフォルトでオンになっています。
多くの環境では Illustrator で線をまともに表示することすらできない状態でリリースされたということになります。
さすがにこれはリリース前に気づけたのではと思うのですが、どうしてそのままリリースしたのか理解に苦しみます。
また、アップデートで「問題が解決されます」と書いてあったのに問題が全く解決していないのも
「一体何のためのアップデートなのだろう」と思ってしまいます。
Photoshop の「デザインスペース」も、試験機能とはいえ到底使い物になるレベルではなく、なぜ正式リリース版に搭載したのか理解できませんでした。
Adobe 製品はバグの修正より新機能の搭載が優先される傾向があるので、このままバグが修正されず、次のバージョンではさらに不具合だらけの新機能が追加されていくのではと心配になった…というのが、Adobe CC 2015 の正直な感想です。