「Google Bard」は、GoogleがChatGPTやBing AIなどに対抗して公開した、大規模言語モデルを使用した、いわゆるチャットAIです。
昨日までは日本語で質問しても英語で返答していましたが、本日未明の「Google I/O」というイベントに合わせて、日本語での質問や返答にも対応しました。
早速多くの方がBardを試していますが、「回答の精度にがっかりした」という感想もみられます。
しかしがっかりする前に試して頂きたいことがあります。
それは回答の右上に表示されている[他の回答案を表示]をクリックして別の回答案を見ることと、数時間前の情報についてまとめて解説してもらうことです。
[他の回答案を表示]について
ChatGPTの場合、1つの質問に対して回答を1つ生成し、別の回答を見たい場合は[Regenerate trsponse]ボタンをクリックする必要があります。
それに対して、Bardは基本的に回答を3つ生成します。
回答の右上に表示されている[他の回答案を表示]をクリックすると、2つめや3つめの回答に切り替えられます。
さまざまな分野について質問したところ、プログラミングやIT関連の質問は1つめの回答が十分精度の高いものが多かったのに対して、それ以外の分野、たとえば歴史や架空のキャラクターについての回答が欲しい場合は、2つめの回答よりも2つめや3つめの回答の方が精度が高いことが多いと感じました。
[他の回答案を表示]の例
たとえば、はじめてBardのページにアクセスすると「織田信長が現代の経営者だったとしたら…」という活用例が表示されたので、試しに質問してみました。
最初に表示された回答はあまりにも無難すぎて、「織田信長以外の場合でも同じこと言うのでは?」という疑問を感じてしまいました。
同じ質問をChatGPTにしたところ、GPT-4ではなく3.5でさえ、織田信長の人物像や活躍と絡めたアドバイスをしてくれました。
これは厳しいなと思いましたが、Bardの場合は右上の[他の回答案を表示]を表示し、3つめの候補をクリックすると、ChatGPTと似た回答をしてくれました。
数時間前の情報についてまとめて解説してもらう
Bardを初めて試したとき、てっきりBing AIのようにネット検索して検索結果のリンクを表示させるものかと思い、「Webデザインに関連する最近のニュースを教えて」とか「Webデザインに関連する最近のニュース記事のURLを教えて」などと質問していましたが、最近のWeb関連ニュースの記事の一覧を回答させることはできませんでした。
しかし、「Google IO 2023で発表されたものについてわかりやすくまとめて」のように具体的なニュースの内容をまとめてもらうと、わかりやすい回答を得ることができました。
どうやら、Bardは「Bing AIのようなネット検索して回答するAI」と考えるのではなく、「最近の情報も知っているChatGPTのようなAI」と考えた方が良さそうです。
情報についてまとめるためのプロンプト
○○がどのようなサービスなのか、3行でまとめて
最近聞いた新しいサービスがどのようなものなのか、短くまとめてくれます。
ただし、箇条書きにはなりません。
○○がどのようなサービスなのか、箇条書きで3行でまとめて
「箇条書き」と指定することで、箇条書きの3行でまとめてくれます。
例:
- ○○がどのようなサービスなのか、箇条書きで3行でまとめて
- Google IO 2023で発表されたAndroid 14について、箇条書きで3行でまとめて
○○の情報を、ゆっくり解説動画の霊夢と魔理沙のセリフで解説して
情報そのままではなく、2人の人物の会話形式で解説してもらうことができます。
ただし、本物(?)のゆっくり解説動画とは異なり、妙にポジティブな発言が多いです。
例:
- Google IO 2023で発表された情報を、ゆっくり解説動画の霊夢と魔理沙のセリフで解説して
- pixivFANBOXがAI画像を禁止した理由を、ゆっくり解説動画の霊夢と魔理沙のセリフで解説して
- ChatGPTとGoogle Bardの比較を、ゆっくり解説動画の霊夢と魔理沙のセリフで解説して
※「ゆっくり解説動画のフォーマットで解説して」などではNGで、「ゆっくり解説動画の霊夢と魔理沙のセリフで解説して」でなければいけません。
○○のgithubのURLを教えて
「最近のWeb関連ニュースのURLを教えて」などはNGですが、GitHubリポジトリのURLはすぐに教えてくれます。
Adobeと連携して画像生成にも対応?
Bing AIは最近画像生成にも対応しました(Open AIのDALL-E2を使用)。
BardはAdobeと連携して画像生成にも対応するようです(開発中のAdobe Fireflyを使用)。
ただし、以下のツイートを参考に”Make an image of rabbit.” と質問してみましたが、今はまだ生成してくれないようです。
For example, in the coming months, we’ll integrate Adobe Firefly into Bard so you can generate completely new images from your own imagination, then edit further or add to designs in Adobe Express. #GoogleIO pic.twitter.com/eECyUU4WfS
— Google (@Google) May 10, 2023
Bing AIやChatGPTと比較したメリット
Bing AIとの比較
Bardは、まだまだ開発途中な感じを受けますが、Bing AIと比較してメリットもあると思いました。
たとえば、Bing AIはGPT-4ベースなので本来賢いはずですが、何か質問すると毎回検索して、Bing検索の上位にある情報をまとめて回答するため「いかがでしたかブログ」や「Yahoo!知恵袋」などの情報を拾ってしまい、誤った解答をすることも多いです。
しかしBardはネットの情報そのままではなく、ネットの情報をもとにAIモデルをトレーニングし、トレーニングした情報をもとに回答しているような印象を受けます。
要するに、Bing AIよりも新しい情報の回答が正しいことが多いです。
ただし、Bing AIとは異なり参考にした情報のページのリンクが付いてこない(英語版の場合はリンクが表示されることもありましたが、日本語版では今のところ回答にリンクが付いているのを見たことがない)です。
情報が正しいかの確認のためにも、Web制作者としてもリンクは欲しいなと思っています。
追記: 「○○という人物について教えて」と質問し、Wikipediaの情報をほぼそのまま返答した場合には、日本語版BardでもWikipediaのリンクが付いていることを確認しました。
ChatGPTとの比較
ChatGPTは現在(拡張機能などを使用した場合を除いて)ネット検索して回答できないため新しい情報に回答することができません。
Bardは「数時間前の情報をわかりやすくまとめて回答できる」ので、この1点だけでもメリットはあると思います。
ただし、ChatGPTは今後「GPT-4 + ネット検索による回答」に標準で対応するようなので、Bardとどちらが良いものになるか楽しみにしています。