ここ数日、「MicrosoftがInternet Explorer 11のサポートを終了」というニュースが話題になっていましたが、誤解されている方も多いようですのでこの記事で解説します。
この記事はWeb制作者の方、およびWeb制作を依頼される方向けに書いています。
追記: IE11のサポートは2022年 6月 15日で終了しました
この記事を書いた後、IE11のサポートは2022年 6月 15日で終了し、それ以降はIE11を起動しようとするとGoogle Chromeと同じブラウザーエンジンを使用したEdgeが強制的に起動することが発表されました。
関連ニュースは以下のページをご覧ください。
2021年5月の、これだけは押さえておきたいWeb関連の動き | Stocker.jp / diary
IE11がなくなるわけではない
このニュースを見て「IE11のセキュリティアップデートが終了する」、あるいは「IE11がWindows 10から強制的に削除される」と認識されている方が多いようですが、残念ながらそうではありません。
「Microsoft 365、およびMicrosoft TeamsがIE11のサポートを終了」というのが正しいと言えます。
Microsoft 365やMicrosoft TeamsというのはMicrosoftが提供しているサービスです。
これまではIE11でも動作していましたが、「今後はそのサービスがIE11では動作しなくなるため、Microsoft Edgeをはじめとした新しいWebブラウザーでそのサービスを利用してください」ということです。
Microsoft社員の方のツイート
このニュースに関して、元の記事が英語であるため、元記事を読まずに誤解している方が多いように見受けられます。
日本語での参考情報として、日本Microsoft社員の、ものえおさむさんのツイートは以下のとおりです。
IE11の対応を続けた方が良い?
多くのWeb制作者にとっては残念なことに、IE11が今すぐなくなるわけではありません。
では今後も今まで通りIE11の対応をし続ける必要があるか?と言うと、私はその必要はないと考えています。その理由を順に説明していきます。
TwitterもYouTubeもIE11に対応していない
普段IEを使っていない方はお気づきでないかもしれませんが、既にTwitterもYouTubeもIE11では見ることすらできません。
現在Windows 10でIE11を使用してYouTubeやTwitterにアクセスすると、強制的にMicrosoft Edgeで開き直されます。
具体的に言うと、IE11でアドレスバーに[youtube.com]と入力してEnterキーを押した瞬間にEdgeが起動し、そちらにウインドウが切り替わります。
なぜウインドウが切り替わるのか、Twitterで @ykatombn さんに教えて頂いたのですが、IEアドオンとして「IEToEdge BHO」というアドオン(拡張機能)がインストールされており、IE11で特定のサイトにアクセスしたときにEdgeに切り替わるようになっているようです。
※Chromeが起動している場合、Chromeに切り替わることもあるようです。
※「IEToEdge BHO」アドオンは無効化したり削除することはできません。つまりIEではもう表示することができません。
どのWebサイトが対象になっているかは、以下のURLのXMLファイルで確認できるようです。
https://edge.microsoft.com/neededge/v1
このXMLファイルを見ると、 “youtube.com” というURLを含む場合 MSEdge へのリダイレクトが許可される、と読めるコードがありました。
<site url="youtube.com">
<open-in allow-redirect="true">MSEdge</open-in>
</site>
そのほか、Canva、ブルガリ、BMWなど1100件以上の有名企業のWebサイトがEdgeにリダイレクトされるよう設定されていることが確認できました。
(追記: Apple公式サイトもEdgeにリダイレクトされるよう設定されていました)
つまり、IE11でWebサイトを閲覧しようとしても有名企業のWebサイトにアクセスするたびにEdgeでページが開かれてしまうため、IE11でWeb閲覧を続けることは困難である、といえます。
IEのみ対応している方へ
「マイナポイント」というWebサイトがIE11のみ対応と発表されたところ大炎上し、日経新聞にまでIE11のみにしか対応していないことが問題として掲載されました。
関連: デジタル政府、「IE縛り」急所 情報漏洩の守りに不安 :日本経済新聞
今後IEにしか対応しないことは炎上リスクがある上に、そのWebページを見れる方も減ります。
多くの日本人は、そもそもPCではなくスマートフォンでWebサイトを閲覧しています。
PCでWebサイトを閲覧している方の多くは、すでにGoogle Chromeに移行しています。
IEはすでにごく少数の方しか使用していません。
Source: StatCounter Global Stats – Browser Market Share
StatCounterの統計によると、日本だけに絞っても直近の統計でChromeとSafariが圧倒的であることが分かります。
IE対応を要請したいと考えている方へ
IE11は2013年にリリースされた古いWebブラウザーです。
IE11は2013年以降、新しい機能が提供されていません。しかし、それ以外のWebブラウザーにはHTMLやJavaScriptの新機能をはじめとした新しい機能が数多く提供されています。
「IE11と、それ以外のWebブラウザーには大きな機能の差がある」ということをまず認識する必要があります。
もしあなたが「Webページで最新の機能を提供したい」と考えているのであれば、IE11の対応は諦める必要があります。
こういった話をすると、まれに「Web制作者の努力が足りない」とか「JavaScriptを使えばどうにかなるんじゃないか」と思われる方もいるようですが、IE11が新しい機能に対応していない以上どうしようもありません。
たとえば、古い白黒のテレビでカラーの映像が見れないのは「映像制作者の努力が足りない」からでしょうか?
YouTubeやTwitterのような大手Webサービスはもちろん、Microsoftでさえ「IE11の対応を終了する」と発表しています。
今後もIE11に対応する必要があるのか、改めて考え直す時期ではないでしょうか。
この記事のまとめ
IE11が今すぐなくなるわけではありません。
しかし、世界の大手サービスは既にIE11への対応を終了しており、とうとうMicrosoftさえも対応を終了することが発表されました。
世界の1100以上の有名なWebサイトにIEでアクセスしようとすると、強制的にEdgeで開き直されます。
つまり、多くの場合IE11でWebサイトを閲覧し続けることができません。
このような状況で本当に今後もIE11に対応すべきかどうか、考え直す時期ではないかと思います。
なお、Web制作者の方にアンケートを採ったところ、「IEに対応し続けたい」という方はわずか2.3%でした。