Photoshopを初めて使う方にとって、効果がわかりにくいツールはたくさんあると思います。
その中でも、「覆い焼き」「焼き込み」「なげなわ」ツールは特に効果がわかりにくいツールではないでしょうか?
この記事では、そもそも「覆い焼き」「焼き込み」「なげなわ」などのツールのもとになったものが何なのかを知ることで、それらのツールについての理解を深めたいと考えています。
写真の現像について
「覆い焼き」は、自分でフィルム写真の紙焼き(フィルムから印画紙へのアナログプリント)をしたことがある方であればピンと来ると思います。
私の場合、学生の頃写真部に所属していました。
その時、モノクロフィルムの現像や紙焼きを自分でやっていたため、「覆い焼き」や「焼き込み」について知ることができました。
写真の紙焼きは、モノクロ(白黒写真)であれば比較的簡単におこなうことができます。
モノクロ写真の一部を明るくしたい、または暗くしたいということがあった時に「覆い焼き」や「焼き込み」をすることで写真の一部を明るくしたり暗くしたりすることができます。
写真を紙焼きするときは、引き伸ばし機と呼ばれる機械にフィルムをはさみ、引き伸ばし機から印画紙に光を当てることで紙焼きを行います。
その際長時間光が当たった部分ほど色が濃くなります。
以下の動画をご覧いただくと、紙焼きのイメージがつかみやすいかもしれません。
たとえば紙焼きのために10秒間印画紙に光を当てるとして、そのうち5秒ぐらい印画紙の左半分を黒い紙などで光が当たることを遮ると、左半分は明るい写真になるということです。
覆い焼きとは
視力検査で使うような黒い丸に棒がついたものを紙焼き中の印画紙の上にかざすことで、写真の一部を暗くならないように抑える(つまり明るくする)ことができます。
焼き込みとは
焼き込みはその反対で、穴が開いた黒い紙を印画紙のうえにかざすことで、その部分をより暗くできます。
Photoshopでの「覆い焼き」「焼き込み」ツールの使い方
Photoshopでは、明るくしたい場所を覆い焼きツールでドラッグするとその部分を明るくできます。
たとえば、いちごの写真の下半分が暗いのが気になって明るくしたいと考えたとします。
左のいちごが補正前、右のいちごが覆い焼きツールで補正した後です。下半分の赤い部分が明るくなっています。
覆い焼きツールを選択し、オプションバーの[範囲]から[シャドウ]を選択し、[露光量]を[50%]にしていちごの写真の下半分をドラッグするとその部分が明るくなります。
試してみたい方は、以下のページの中程にある[M キャッチサイズ]ボタンをクリックしていちごの写真をダウンロードしてください。
以下の動画を参考に覆い焼きツールで写真を明るくしてみてください。
Affinity Photoで覆い焼きツールを使用する場合の動画もあります。
なげなわとは
西部劇を観たことがある方であれば、馬に乗った人が縄を投げて馬を捕まえるようなシーンを見たことがあるかもしれません。
その縄のことを「なげなわ」と言います。
なげなわツールで写真の一部をドラッグするとその部分が選択範囲になります。
ただ、私はこのツールのことを「なげなわ」と呼ぶことに違和感がありました。
なげなわは、たとえば馬に投げつけた後に引っ張ると締まるのですが、なげなわツールはただ囲むだけで図形などに合わせて締まることがないため違和感を感じていたのです。
しかし最近知ったのですが、初期のMac用グラフィックアプリは白と黒の2階調の画像しか扱えなかったのですが、白または黒の図形の周りをなげなわツールでドラッグすると「図形に合わせて締まる」という動きをしていたそうです。
以下の動画をご覧いただければその動きがわかりやすいと思います。
なげなわツール(Lasso tool)がなぜ「投げ縄」なのかというと、MacPaint など初期のグラフィックソフトは白黒二値で、なげなわツールで領域を囲むとその内側にある黒いピクセルの形に合わせて選択範囲が「締まる」ようになっていた。それが投げ縄っぽいから。ちなみにこのビデオは HyperCard。 pic.twitter.com/EcSkmZIrGY
— Manabu Ueno (@manabuueno) 2019年12月24日
現在のPhotoshopではなげなわツールで「図形に合わせて締まる」ことはありませんが、Photoshop 2020では「オブジェクト選択ツール」という新しいツールがあり、これはドラッグした範囲の中にあるオブジェクト(図形や人物など)を認識して自動的に締まるようになっています。