Photoshop・Lightroomの新機能「スーパー解像度」が使える場合と使えない場合について

この記事ではPhotoshopの新機能「スーパー解像度」を試し、他社の機能と比較した場合のメリットやデメリット、使えるケースと使えないケースについてまとめています。

「スーパー解像度」は記事執筆時点ではPhotoshop Camera RAW(RAW現像ダイアログ)にて実行でき、今後Lightroomでも搭載予定とされています。

「スーパー解像度」とは何か

いわゆる「AI・機械学習を使って写真を高解像度にする」機能です。
従来からある「ディテールを保持 2.0」では、JPEGのような現像後の写真を高解像度に拡大できましたが、「スーパー解像度」ではRAW現像時に写真を高解像度に拡大できます。

圧縮されて情報量が減らされたJPEG画像よりも、撮影時の生データであるRAW画像の方が大幅に情報量が多いため、より綺麗に写真を拡大できると期待できます。

他社製品の類似機能について

他社製品には既にこういった機能を持ったものがあり、「Pixelmator Pro」というアプリの「ML Super Resolution」や、Topaz Labsの「Sharpen AI」などのアプリがあります。

AdobeはこれまでAIに力を入れていましたが、後発であるにもかかわらず比較するのが厳しいレベルだったのですが、今回ようやく比較に値する(用途によってはメリットがある)ものが出てきたという感じがします。

「スーパー解像度」で拡大した写真の比較

↓は補正前の写真で、中央の黄色の枠部分をトリミング(切り抜き)したものがさらに下の比較写真です。

以下の写真は黄色枠部分をトリミングしたもので、もとの写真が左、「スーパー解像度」処理後は右です。

※スマートフォンの場合は低解像度の写真が表示されるため、写真をタップして縮小前の画像を表示してください。わかりにくい場合は、写真をタップした後ピンチアウトで拡大してご覧ください。
※Retina・HiDPIなどの高密度ディスプレイではない場合(従来のWindows用ディスプレイなど)の場合も写真をクリックして縮小前の画像を表示し、さらにクリックして等倍でご確認ください。

他の写真も同様に一部をトリミングし、「スーパー解像度」処理したものと比較してみました。

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今回使用したRAW画像のダウンロードして試したい方へ

Photoshopの「スーパー解像度」は一般的なカメラのベイヤーセンサーだけでなく、FUJIFILMのX-Transセンサーにも対応しているとのことだったので、私が所有しているFUJIFILM X-E3で撮影したRAW画像で試しました。

ZIP圧縮したRAW画像は、以下のリンクからダウンロードできます。

ZIPファイルをダウンロード

試したい方はZIPを展開後にできたファイルを「最新版にアップデートした」Photoshop 2021(バージョン22.3.0以上)で開いてください。
Photoshopで DSCF8570.RAF ファイルを開くと[Camera RAWダイアログ]が表示されます。
そこで画面中央に表示された写真部分を右クリックして[強化…]を選択してください。

[スーパー解像度]にチェックを入れ、Enterキーまたは[強化]をクリックします。

追記: スーパー解像度はノイズ除去と併用して利用できない

[ノイズ除去]にチェックが入っている場合、[スーパー解像度]は利用できないようです。
どちらか1方しか利用できないため、もう1方のチェックを外す必要があります。

どのような写真でもうまくいくわけではない

いろいろな写真で試したところ、以下の条件を全て満たした場合に限りうまくいく事が分かってきました。

  • 晴れまたは曇りの日中〜夕方の比較的明るい時間帯に撮影されている
  • 完璧にピントが合焦している
  • カメラブレが一切ない(等倍表示でようやく分かる程度の軽度なブレもNG)
  • 被写体ブレが一切ない(走っている人や車などは完璧に静止状態になるようシャッタースピードを速くして撮影しないとNG)
  • 純正AFレンズで撮影している(柔らかい描写のオールドレンズ風MFレンズで撮影したものなどはNG)

この中でどれか1つでも条件を満たしていないものは、「スーパー解像度」を試しても効果がありませんでした。
たとえば「室内で撮影した」「夜間に暗いところで撮影した」「わずかに被写体がブレている」などの写真は効果がありませんでした。

以下の写真(一部をトリミング)は室内の暗いところで撮影し、わずかにブレているのですが「スーパー解像度」の効果がないことが分かるかと思います。

「スーパー解像度」の使いどころは?

「スーパー解像度」はブレやピンボケの補正には使えず、純粋な解像度の向上にのみ使用できるようです。
使いどころがあるとしたら以下の場合などに限られるかと思います。

  • 望遠レンズで撮影できず、標準レンズで撮影してトリミングした写真の解像感を向上させたい時
  • 小さなセンサーサイズのカメラで撮影した写真をWebサイトのメインビジュアルや大判印刷で使いたい時

Adobe CCを契約せず、スーパー解像度のような機能を使いたい時は?

スーパー解像度のように機械学習を使用して画像の解像感を向上させる機能を搭載したアプリはPhotoshopだけではなく、例えば「Pixelmator Pro」という写真編集・現像アプリ(Lightroomの競合アプリ)には以前からそのような機能があります。

Photoshopの「スーパー解像度」に類似した機能は「ML Super Resolution」といい、「ML Denoise」というノイズ除去機能もあります。

「Pixelmator Pro」は4,900円の買い切りアプリですので、Adobe CCを契約しておらず、Lightroomのような写真編集・現像アプリが使いたい方には良いのではと思います。

公式Webサイト: Pixelmator Pro
「ML Super Resolution」の解説記事: Pixelmator Pro update improves ML Super Resolution and ML Denoise – Pixelmator Blog

ピンボケや手ブレも補正したい時は?

Topaz Labsの「Sharpen AI」というアプリの場合、Sharpen(シャープネス・解像感の向上)だけでなく、Stabilize(ブレの補正)やピンボケを修正する機能も搭載されています。

大きな手ブレやピンボケを修正することはできませんが、等倍(100%)表示に拡大した時に分かるような微妙な手ブレやピンボケ程度であれば修正できる場合も多いです。

Photoshopの「スーパー解像度」と比較した場合、Sharpen AIは処理にかなり時間がかかります。
ただし、私が使用しているiMac Retina 5K 2019に搭載のGPUには対応していないようなので、対応したGPUを搭載したPCであれば処理速度は速くなるかもしれません。

公式Webサイト: Sharpen AI – tack-sharp photos that still look natural

まとめ

Photoshopの「スーパー解像度」は、以下の方にはメリットがあると思います。

  • Adobe CCを契約中の方
  • ふだんLightroomで写真を管理・現像している方

Adobe CCのサブスクリプション契約をせずに「スーパー解像度」のような機能を使いたい場合は「Pixelmator Pro」、ちょっとした手ブレやピンボケも補正したい場合は「Sharpen AI」を使うことを検討されると良いと思います。

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