Adobe XDで無料のスタータープランを使い続ける方法

Adobe XDはこれまで、有料のプランだけでなく無料のスタータープランがありました。
無料のスタータープランは書き出しや共有に制限があるもののXDのファイルを編集できました。

無料のスタータープランは、デザイナーではない方(営業担当者や経営者、ディレクターなど)がデザインカンプを見たい時や編集をしたい時、自分の考えをデザイナーに伝えたい時などに重宝されていました。

ところが、Adobe XDがバージョン50になってから「無料のスタータープランが使えなくなった」というツイートを多く見かけるようになりました。
その一方で「まだスタータープランは使えるらしい」と言っている方もいます。

どちらかはっきりしないままなのはモヤモヤして気持ち悪いので、Adobe製品をインストールしていないWindows 10にAdobe XDを新規インストールして、スタータープランが利用可能かどうか検証しました。

先に結論を書いておくと、Adobe XDは執筆時点(2022年4月)では無料のスタータープランを利用することが可能です。

ただし、Adobe XDの製品トップページからアプリをダウンロードしても利用不可で、Google検索に出てこない特定のページからダウンロードする必要があり、最新版は利用できない、Adobeのサポートも受けられないといった制限があります。

Adobe XDの製品トップページから普通にダウンロードするとどうなるのか

Adobe製品をインストールしていないWindows10にて、まずはGoogleで「Adobe XD」というキーワードで検索してトップに出てくるAdobe XDの製品トップページを見てみました。

ページ上部のナビゲーションバーには「無料で始める」という目立つリンクがあるので、ここをクリックすると7日間体験版(8日目以降は有料)のページが表示されます。
どうやらここはハズレのようです。

続いて、同じページの下の方にある「XDを無料で入手」という目立たないリンクからアプリをダウンロードしてみます。
以前はここからダウンロードすれば、スタータープランが利用できたようです。

ダウンロードしたアプリは「XD_Set-Up.exe」という名前になっていますが、これを起動するとインストールされるのはAdobe XDそのものではなく、「Adobe CCデスクトップアプリ」と呼ばれる、Adobe製品をダウンロードしインストールするためのランチャーアプリのようなものです。

Adobe CCデスクトップアプリでAdobe XDをダウンロードしようとすると、Adobe XD単体の有料プランかAdobe CCコンプリートプランかを選択させられ、その後クレジットカード情報の入力画面になります。
スタータープランは表示されず、クレジットカード以外の支払い方法も選択できませんでした。

Adobe XDスタータープランはどこにあるのか

Adobe XD製品ページからリンクされている「価格」のページ には、以前あったはずのスタータープランの表記がなくなり、有料版の表記しかありません。

これはもう、スタータープランの新規ダウンロードは無理かと思っていたのですが、Twitterでさきもりさん(@sakimori)にスタータープランについて解説しているページのリンクを教えていただきました。

リンク: スタータープラン |Adobe XD

「このページからダウンロードするとスタータープランのAdobe XDが利用できる」と聞いて試してみたところ、確かにリンクをクリックした直後にAdobe CCデスクトップアプリでAdobe XDのインストールが始まりました。

その後はクレジットカード情報などを要求されることもなく、スタータープランのAdobe XDが起動しました。

スターター版のAdobe XDのバージョンは49となっています。
記事執筆時点で有料版のAdobe XDのバージョンは50です。

余談ですが、このスタータープランについて解説されているページのHTMLソースには以下の行があります。

<meta name="robots" content="noodp ,NOINDEX , NOFOLLOW"/>

これは要するに、検索エンジンにこのページが表示されないように細工しているということです。
Adobeとしては、このページは削除はしていないものの、あまり存在を知られたくないようです。

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スターター版はアップデートできるのか

スターター版のAdobe XDをアップデートしようとすると、購入または体験版にすることを求められます。
つまり、バージョン50またはそれ以上にしたい場合はお金を払う必要があるということになります。

Adobe XDは毎月アップデートされており、アップデートされた時にファイル形式が変わることがあるため、今後新しいバージョンの有料版Adobe XDで制作したファイルがスターター版では読み込めなくなる日が来るかもしれません。

Adobeの見解は?

まずはAdobe JapanのサポートにAdobe XDスタータープランに関する質問をしてみました。

Q: Adobe XDスタータープランは今後も利用可能なのでしょうか?

A: 無償製品の為、弊社ではサポートを提供しておりません。
ご利用に関するご質問・ご相談につきましては、下記ユーザー様同士で情報交換が可能な『アドビサポートコミュニティ』にてご質問をお願いいたします。

リンク: Adobe Support Community

Q: XDの体験版を利用開始から7日間経過する前に解約した場合はどうなるのでしょうか?

A: 7日間の体験期間付きプランに関しては、ご解約がない場合自動的に有償契約へと切り替わります。
体験期間中にご解約された場合、有償契約へは切り替わりませんが製品のご利用ができなくなります。

なぜこのような質問をしたかというと、Twitterで @AdobeXD というAdobe公式の認証済みアカウントが少なくとも5回、英語で以下のようなリプライを送信しています。

このツイートで重要だと思う部分: There is no commitment; if you cancel during the trial period, you will go back to the Starter plan.

最後の部分をGoogle翻訳すると「試用期間中にキャンセルした場合は、スタータープランに戻ります。」となります。
その前に付いている “There is no commitment;” は「契約の必要はありません」という意味であるとTwitterでZenLabさん(@zenlabmmm)に教えて頂きました。

Adobeの見解をまとめると

Adobe Japanは「体験版を7日以内にキャンセルした場合、XDは使用できなくなります」と言い、Adobe公式の @AdobeXD アカウントは「体験版を7日以内にキャンセルした場合、スタータープランになります」と言っているように見えます。

Adobe Japanと @AdobeXD で見解が異なっているので非常に説明が難しいですが、Adobe XDの無料のスタータープランは確実に動作する保証はなく、Adobeのサポートは受けられない、バージョン50以上にアップデートできないと考えるのが良いのかなと思っています。
使用するのであれば自己責任ということになるので、企業では使いづらいかもしれません。

以上を理解した上で使いたい場合は、以下のページからスタータープランのAdobe XDをダウンロードできます。

リンク: スタータープラン |Adobe XD

どのような選択肢があるのか

Adobe XDを使用しているのがAdobe CCを有料契約しているデザイナーだけではなく、営業職や経営者、ディレクターなどがスタータープランを使用している場合に影響が出ると思います。
そのような場合、以下4つの案のいずれかの選択を迫られることになると思います。

  • A案: 関係者全員が有料プランを契約する
  • B案: Adobe XDのアップデートを止める(スタータープラン使用者がいる場合、有料契約中の方も含め関係者全員バージョン49を維持する)
  • C案: 体験版をダウンロードして7日以内に解約することで、バージョン50のスタータープランを利用する
  • D案: 別の代替アプリに移行する

以下、それぞれの案のメリットとデメリットについて考えてみます。

A案: 関係者全員が有料プランを契約する

メリット: 最もトラブルが少なそう、Adobeによるサポートも受けられる
デメリット: お金が掛かる

お金の問題がなければ、これが最もトラブルが少ないと思います。
Adobe XDにお金を払うことで、開発を支援することにもつながります。

ただ、Adobe XDスタータープランの仕様が変わったからと言って急にWeb制作案件の予算が増えることはほとんどなく、検索エンジンなどからこのページにたどり着いた方は「予算の確保ができなくて困っているからたどり着いた」という方もいらっしゃると思います。

B案: Adobe XDのアップデートを止める(スタータープラン使用者がいる場合、有料契約中の方も含め関係者全員バージョン49を維持する)

メリット: お金が掛からない、新しいことを覚える必要もない
デメリット: 脆弱性、社外の方が新しいバージョンのXDで制作したファイルが開けない可能性がある

古いバージョンを使い続けるということは、脆弱性(セキュリティホール)が見つかった時にウイルス感染・PC乗っ取り、ランサムウェア等の危険にさらされる可能性があります。

また、関係者全員がバージョン49の場合、今後新しいバージョンのAdobe XDで制作されたファイルを開けなくなる可能性もあります。

C案: 体験版をダウンロードして7日以内に解約することで、バージョン50のスタータープランを利用する

メリット: 最新版のAdobe XDのスタータープランを利用できる?
デメリット: クレジットカードが必要、Adobe Japanは「製品のご利用ができなくなる」と言っているため動作保証はなさそう

先ほどの @AdobeXD のツイートを見ると、「体験版を7日以内にキャンセルした場合、スタータープランになります」と言っています。
これはてっきり、体験版をキャンセルするとバージョン49のスタータープランに移行するものと思っていたのですが、この記事へのコメントで「体験版を解約すると、バージョン50でもスタータープランを使えました。」というコメントがありました。

最新のAdobe XDでスタータープランを利用したい場合かつクレジットカードが用意できるのであれば、試してみるのも良いかもしれません。
(申し訳ありませんが、私は検証しておりません)

D案: 別の代替アプリに移行する

メリット: 既に欧米では主流のFigmaに移行しておけば、今後役に立つかも
デメリット: 新しいことを覚える必要がある

今回の変更により、Figmaという他社のUIデザインツールへの移行を検討されている方もいらっしゃるようです。
Figmaについては↓にまとめています。

代替アプリとしてFigmaはどうなのか

UIデザインツールといえば、日本では現時点ではAdobe XDがもっとも普及しているように見えます。

しかし、欧米ではFigmaがもっとも普及しており、日本のWeb制作環境は欧米の環境が数年遅れて入ってくることが多いため、日本も今後はFigmaが普及する可能性があると私は考えています。

日本でFigmaが普及しない最大の理由はFigmaのUIが英語表記であることだと思いますが、Figmaは日本語に対応することを正式に発表しました。
さらに、アジア最初の拠点として「Figma Japan」を設立するということも発表されました。

Figmaは今後も無料で使用できそうなので、Adobe XDスタータープランの変更をきっかけに、日本での普及に弾みがつくかもしれません。

参考: 世界でデザインコラボレーションツールをリードする「Figma」が日本へ本格進出|Figma Japan株式会社のプレスリリース

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